4 質疑応答 入鹿山・福田・平尾《日本メタデータ協議会 第7回オープンカンファレンス レポート》

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質疑応答に参加する三氏(左より、福田、平尾、入鹿山)。

最後に、司会の入鹿山、講演者の福田氏、平尾氏の3名による質疑応答が行われた。

Q
銀行がどうやって、沖縄の事例のようなコンソーシアムとして組めたのでしょうか?


福田氏
実は、地銀って一緒に何か行うことってほとんどないんです。都銀はありえますけど、地銀同士って本当に難しい。
でも、今回出来た理由は、時代なのではと思います。このままですと沖縄県に4つも地銀はいらない、統廃合が起きるかもしれない。何か新しい方向性がないと、生き残れないという思いがあったのだと思います。
もう1つ、沖縄特有の事情として、本土への対抗心があると思います。ここは本土が出来ないモデルを作って、沖縄のモデルとして全国に示してはどうだろうという問いかけに賛同してくれたのではと思います。
実は、沖縄以外の他県にも声をかけたのです、3つの県に声かけて断られた。沖縄だけが興味を持ってくれたのです。でもどこかで1つ事例ができると、同じことをやりたいという声が出てくるんですね。だから二番目は楽になるかと思います。

Q
世の中には、いろいろな決済システムがありますが、それらのどれかと連動するお考えはありますか?


平尾氏
私たちは、アジア全体の銀行を統一しようぐらいの考えでやっています。世界の誰もが真似したくなる事例を作りたい。誰かと、というより多数の方とやっていきたいと思います。

福田氏
決済はなんでもいいんです。どことやる、といった考えはあまりない。
でも、このシステムは、最終的に本人確認ができないと何もできないのですね。これはマイナンバーで行うことなんです。公的個人認証が、日本ではNO1の個人認証方法であり、マイナンバーカードはこれに紐づいている。
世界を見ても、日本やエストニアが行っているようなインターネットで利用できる公的個人認証がないんですね。アメリカだって社会保障のペラペラの紙しかないのです。
プラネットIDで世界での認証を行い、日本ではマイナンバーカードと併用すれば、より強固になっていく。マイナンバーも、見ている世界は(平尾さんと)同じなんですね。

ですがマイナンバーカードは13%しか普及していない、また13ケタの番号を人に見せてはいけないとしてしまった、マイナンバーカードの取得を任意にしたのも普及の速度を遅くした原因です。このへんは野党との話し合いで妥協した部分もあります。エストニアも最初は任意だったんですが、ある時点で義務化したんですね。
だからいつかは義務化したい、国民全員にメリットが出るようにしたい、そして13桁の番号を開示しても良いようにしたい、これで皆さんのデータが力を発揮できるようになる、これをやりたい。

※公的個人認証:
・地方共同法人「地方公共団体情報システム機構」が運営する認証サービス。
https://www.jpki.go.jp
・総務省による公的個人認証サービスの説明。
http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kojinninshou-01.html

Q
「日本版GDPRは地方から始まる」について詳しく聞かせてください
エストニアを参考にしていると思いますが、日本の地方とエストニアの比較など聞かせてください。

※「日本版GDPRは地方から始まる」:
ascii.jpに掲載された平尾氏の記事。
http://ascii.jp/elem/000/001/692/1692742/

A
平尾氏
あの記事で言いたかったことは、これからは政府とか地方自治体ではなくて、世界にある90〜100個ぐらいの都市が、今後、参考にできる道を示してくれるのではということです。それらの都市は、高齢化が進んでいて年寄りだけの都市だったり、働き盛りの若い人が中心の都市だったり、沖縄のようにいろいろな色を持っている。そして、それらの都市が、これから私たちが進むべき未来の事例になっていくと思っています。
私が考えているのは、GDPRはひとつのきっかけにすぎなくて、究極は、個人情報が個人の意思で任意に公開できれば、ベーシックインカムのようなベーシックサービスが提供され貧困の差をなくすぐらいのことができると思っているんです。

ここまで個人情報を出してくれれば、生活に必要なものは提供するよ、みたいな仕組みが可能ではないかと思っています。そうなればホームレスも発生しないし、今の格差はもう少しフラットになる。それ以上を得たいなら、個々の個性を発揮してもらうというふうになっていく。
いろいろな色を持つ90ぐらいの都市の中で、その色に合わせた事例がで出て来て、輝き出して、それを良い例として国とか政府が、行政に活かしていけるのではと考えています。ですから地方でのGDPRはアリだな、と思いました。

Q
マイナンバーカードですが、健康保険書と一体化すれば良いかと思ってます。
また家計簿アプリのようなもので、自分の支出をすべて管理できれば便利ではと思っています。すでに、これらは個々のアプリとして存在しますが、これをマイナンバーなどと紐付けてデータの交換などができれば良いと思います。


福田氏
いろいろなご意見をありがとうございます。
健康保険証としての義務化は法律的にできなかったので、苦肉の策ですが、健康保険証とマイナンバーカードの一体化が来年度(2019年)から始まります。健康保険は全国民が入っているので、マイナンバーカードを全国民が持つという可能性が高まると思います。
また個人情報の保存は、同じように分散型で考えています。それの出し入れの認証にマイナンバーカードを使うという考えです。企業もそれに加わってくれればと思ってます。
簡単にいうと、税務署に僕のボックスがあればいいわけですよ。何を買ったって、そのデータがピッとそこに行けばいい。例えば医療にかかった費用をマイナンバーカードで払えば、そのデータが税務署に移動する、使った金額がそこ入るとなれば家計簿アプリもいらない。そこまでいきたい。
でも、まだそこまでいっていないので、がんばってます。まずはマイナンバーカードを取るように、周りの人に言ってください(笑)。

Q
個人のデータを、どこかに委託して活用をお願いするというスキームも考えられます。このようにスキームについてはどうお考えですか?


平尾氏
データの委託でビジネスを考えている、マーケティングや銀行のような会社さんとも話をしてます。認証などの機能は私たちが提供するが、データの活用はそのような会社が行う方法はアリだと思います。
また(そうなると)個人情報を活用するためのコンサルが必要になってくると思われますね。

Q
スマホにアプリを入れて個人情報を集める、提供するという方法が、一番早いように思えます。そこをキャリアがやるか、信託会社のような中間会社がやるか? そのあたりはどうお考えですか?


福田氏
いろいろな事業者が関わってくると思います。今後は、端末と通信は別れますので、通信、端末、アプリがバラバラになります。これらが再度どう集まるかは、次の話題ではないかと思います。

平尾氏
すでに複数社が、個人情報の委託業務を考えています。1社でやるとデータを囲い込むことになるので、複数社で行うようにしているのだと思います。

Q
すでに個人と利用先の中間をつなぐような会社もありますが、データがなかなか集まらない悩みを抱えているようです。また若い人の中には、データの重要性や危険性の認識が薄い人も多い。
データを上手に集められる方法、またデータの重要性や危険性を、若い人も含めて知らしめるうまい方法はありますでしょうか?


福田氏
それが分かったら、僕商売やるんですけど…(笑)。
データの重要性や危険性について考える時、その個人にとって知られたくないデータって何かな、と考えると理解しやすいかもしれません。
絶対に知られたくないことがあったら、こうしちゃいけない、ということを知るのが重要になると思います。
またデータを集めるためには、たくさん人やデータが集まってるところに頼まないと一気には集まらないですね。
ただ集める時に、個人の利益になりますよだけじゃなくて、社会の利益になりますよ、といった世界観を提示し『こんなイイ世界になりますよ、だから協力してね』というアプローチはあるかと思います。

平尾氏
今のSNSにアップしたデータがこんな風に悪用されることがある、という状況を伝えることは重要だと思います。
また僕らはデータを持たないようにしているので、集めることはあまり考えていません。でも、福田さんがおっしゃるように『こんなイイ世界になりますよ、だから協力してね』といったビジョンがないと、データは集まらないのではと思います。データを集めるには、共感を得る何かが必要だと思います。1つだけじゃない、いろいろなことがあると思います。

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行政が考えるデータの大きな可能性を聞きマイナンバーの重さを再度実感した。また、エストニアと日本との連合会社が目指す新たなデータ世界にフツフツと沸く興奮が心地よい2時間だったと言えよう。
本カンファレンスでは、ますます巨大化するデータ社会、そしてそこへの取り組みの輪郭が見えたのではないだろうか。

・・・・「カンファレンスの他の講演」・・・・
第7回カンファレンス「貨幣から情報へ」トップページ
1 今、なぜ「情報」なのか 入鹿山剛堂
2 キャッシュレススキームは沖縄から始まる! 福田 峰之
3 日本とエストニア連合で目指す個人情報とインターネットの復権 平尾 憲映
4 質疑応答 入鹿山・福田・平尾(本ページ)

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