1 今、なぜ「情報」なのか《日本メタデータ協議会 第7回オープンカンファレンス レポート》

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NPO日本メタデータ協議会理事長 入鹿山剛堂

・データ活用にはメタデータが重要
日本メタデータ協議会、第7回オープンカンファレンスは、入鹿山の「貨幣から情報へ・データ活用新時代とメタデータ」というオープニングスピーチから始まった。

「今回は『貨幣から情報へ』をテーマとし、価値が大胆に移行していく昨今の様子を、データ活用新時代とメタデータと題しましてお話をいたします。
メタデータはコンテンツに伴う属性データで、音楽ならコンテンツは音楽そのものですが、アーチスト名や楽曲名がメタデータになります。テレビ番組なら、番組名や放送局名などがそれに当たります。
今メタデータが注目されている背景には、多様なデータをスムースにトラブルなく利活用したいというニーズがあるからと思われます。」

「例えば、一人暮らしの高齢者が増える中、健康のケアをITでできないかという発想があります。その場合、高齢者の動向をウェブカメラで確認する方法が考えられますが、映像をそのまま使っては、映し出されている方のプライバシーの問題が発生します。
でも健康のケアだけなら、起きている、寝ている、歩いている、倒れたといったメタデータのみの監視を行えばよく、これならプライバシーの問題は発生しないと思われます。」

データが重要ということはわかる。ならばデータを集めればいいじゃないか、となるわけだが、個人情報保護やプライバシーの問題を考えると、データそのままでは使えない場合も多い。しかし付随するメタデータを活用するといった方法ならば、利活用に大きな道が開けると入鹿山は言う。

NTTドコモのホームページから。東京の任意の場所と時間の人口変動を推定。山の高さが人口の多さを示す。 https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/disclosure/mobile_spatial_statistics/

「例えばこれはNTTドコモが実施しております『モバイル空間統計』という調査活動です。各個人の携帯からのアクセスデータを使って任意の場所、時間における人口を推定したりできます。」

「携帯電話のデータは容易に個人が特定できますから、その活用には、プライバシーへの注意が必要です。そのために必要なことは、データの匿名加工化です。個人が特定できないようにデータを加工し、いわゆるメタデータの形にして処理するわけです。
携帯の場合、個人に関するデータを全てふせる非識別化処理や、山の中の一軒家のデータを使っては名前を隠してもその人ということがわかってしまいますので、こういったデータを除外する秘匿処理などを行います。この結果、携帯電話のデータを初めて活用できるようになるわけです。」

データ処理の様子。個人やプライバシーに関するデータを処理し、必要なメタデータのみ抽出する。当日の資料より。

データの利活用に関する具体的なイメージが掴めたところで、入鹿山は、データに関する世界の潮流について語った。

・個人のデータは個人のものという欧州の潮流
「従来ですと、モノとかお金が重要と言われてきましたが、それよりもデータが重要な価値を持つ時代になってきています。GAFAといった膨大な個人情報やビッグデータを持っているところが、世界市場を支配するといわれ、資本もまたそこに集まるようになっています。
この状況に危機感を抱いている欧州は、GDPRなどの規制で個人の権利を保護しようとしています。日本も追従する傾向にあります。」

EUのデータ保護に関するページ。 https://ec.europa.eu/info/law/law-topic/data-protection_en

※GDPR:
General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」2018年5月25日に施行されたEUのデータ保護に関する法律。
個人の権利保護のため、個人情報の越境ルールを統一することで、欧州に限らず日本でもヨーロッパ人がいる場合は規制対象になる。違反企業には、世界売り上げの4%もしくは日本円にして約24億円という制裁金が課せられる。

・遅れている日本のデータ活用
「今、データの扱いや活用に注目が集まっています。しかし日本のデータ活用はたいへん遅れています。日本は、技術力や省力化には注力するのですが、データ活用やIoTには極めて消極的です。その背景として、データセキュリティ、プライバシーの問題などがあるためと思われます。」

「GE(General Electric Company)のグローバル・イノベーション・バロメーターのグラフです。主要25か国の経営者がイノベーションにどの程度データを活用しているかの割合を示しています。日本は、一番右で断トツに小さい。日本がイノベーションにデータを使わないことがよくわかります。」

当日の資料より。

「日米IT予算増額の用途比較です。日本は断トツでITによる業務効率化とコスト削減に使われていることがわかります。一方米国は、新たな技術、製品、サービスの利用、あるいはビジネスモデルの変革といった、攻めのIT投資に使われています。」

・なぜ日本は、ITやIoTの活用に消極的なのか?
「従来の日本の経営者は、ITとは省力化や経費削減の手段であると思い込んでいます。ですから、ITによる経費削減効果がITの投資額を上まわらないかぎり導入しない。
しかし、昨今ではIT導入による経費削減効果は薄くなってきているうえに、新たな活用方法であるIoTなどは、お客様の数が10万100万といった数に増えないと効果がでないところもあり時間がかかる。このような理由でデータ活用が進んでいないようです。」

当日の資料より。

「総務省の白書によれば、IoTの導入率は、2015年は米国がトップでした(図の中央付近、黒い文字の「米国①」)。5年後の2020年でも米国はトップ(図の右上、赤い文字の「米国②」)ですが、次は中国、ドイツ、英国、韓国と続き2020年になっても日本は2015年の米国にも追いついていないという状況です。やがて日本は、アジア諸国の中でIoTやデータ活用の後進国になってしまうでしょう。」

・今後、日本がグローバルな競争力を持つには何をしなければならないのか?
「どのようにデータを活用し、かつどうやって個人の権利を保護していかなければならないのか? 特に衰退化する地方の活性化を、データでどのように行うのか問題になっています。
今日は、これらの課題にどう立ち向かうのかについて、福田、平尾両名に語っていただくことにしましょう。」

・・・・「カンファレンスの他の講演」・・・・
第7回カンファレンス「貨幣から情報へ」トップページ
1 今、なぜ「情報」なのか 入鹿山剛堂(本ページ)
2 キャッシュレススキームは沖縄から始まる! 福田 峰之
3 日本とエストニア連合で目指す個人情報とインターネットの復権 平尾 憲映
4 質疑応答 入鹿山・福田・平尾

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