稲田修一・早稲田大学研究戦略センター教授「事例から考えるビジネス変革の進め方」《日本メタデータ協議会 第8回オープンカンファレンス レポート》

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 稲田氏は、スマートIoT推進フォーラムIoT価値創造推進チームのリーダーを務めており、そこで見聞した50以上の現場におけるDXの現状を語ってくれた。

「DXを行う上で大切なことは、何を指標にするかということです。プロセスの最適化でしょうか、省人化、自動化、もしくはビジネス変革でしょうか。最近では、ビジネス変革の重要性が指摘されていますよね。」

「指標が大切なのは、それによって向かう方向がまったく変わってくるからです。テレビには視聴率という指標がありますが、これをユーザー満足度、スポンサー満足度に変えた途端、テレビ局の行動は変わるでしょう。つまり指標を変えると、行動は変わるのです。」

省力化はドラスティックに進んでいる

「省力化という指標では、今一番A Iしているのはコールセンターです。日々のコール数を予測して、オペレーターさんの数を事前に把握し、質問に関連する情報をすぐにオペレーターさんのPCに表示するなど、在宅勤務も視野に入れ負担軽減の方法が出来つつあります。

 また操作革命が起きているのが建設業界。ここは中高年がすごく多いんですね。だからしんどい仕事はロボットに、という動きが出てきています。清水建設さんの次世代型生産システム、シミズ スマート サイトでは、作業者がタブレットでロボットを操作しています。」

睡眠を数値化し、達成感を目指す

「睡眠の質の数値化というビジネスが生まれつつあります。介護施設に入居されている方々方は、昼に寝てしまうと夜は目が覚めてしまう。運営側としては、介護は夜が手薄になるので、昼間はちゃんと運動などして起きていて、夜はきちんと寝てもらいたいわけです。その方が健康にもいい。

 そこで睡眠や活動パターンを可視化し、そこから疲労回復度、快眠指数を測れるようにしました。夜、ちゃんと寝ると快眠指数が良くなる、本人もその数値を見ることでうれしくなる。つまり数値化することで、人間の行動に訴えることができるんですね。

 活動を数値化するデータサイエンスで、人間の行動を変えられるという部分は重要なポイントですね。まだこのへんに、気づいている企業は少ないようです。」

社内でDXに対応できる人材を育成

「ダイキン情報大学は、大阪大学とダイキンさんが始めた社内教育システムで、新卒100人が2年間研修し、A IやIoTに精通した人材を育てるというものです。すごいのはこの間、現場には配属されないことです。

 さらに社内でDXを進めるなら、幹部も最新技術の使い方を理解すべきだということで、幹部を含む全員が研修を受けることになっているようです。こうして幹部や社員がITに強くなると、社内の意思決定がめちゃくちゃ早くなりそうです。

 社会人になっても勉強は必要ということですね。早稲田大学も社会人教育をやっておりますので、来ていただければと思います(笑)。」

DXを成功させるために

 最後に稲田氏から、成功に向けての4つエッセンスが紹介された。

  1. 何をどうDXするかを洗い出し、成功しそうなものからやる。成功すると、現場が、やらなければいけないと認識してくれる。これが一番大事。
  2. わかっている人に情報を集中し、わかっている人からわかってない人に情報を共有させる。
  3. 必要なら、I T企業などをコンサルとして雇う。
  4. やっていくと戦略ができてくる。戦略がわかったら、それを公開する。公開するとパートナーや競争相手がちゃんと見えてくる。

「早くやっちゃった方が勝ちなんですね。早くやって、そのモデルを確立して、No.1になって、他が追いつけないようにする。ダイキンさんも栗田工業さん(水質改善のサブスクリプションモデル)もイノベーションのオープン化を進めておられ、いろいろな方がプロジェクトに参画されています。それがスピードアップにつながっています。」

睡眠のデータを取得し、それに基づいて「快眠指数」という値に数値化。ユーザーも、その数値を良くしたいと、積極的に生活改善に努めるようになる。
ライフリズムナビ+Dr.公式サイトより
http://info.liferhythmnavi.com/